大阪・神戸 住まいの相談 一級建築士事務所 伊藤建築コンサルタント

建築物の長寿命化への取り組み

日本の建物の現状

箱木千年家これまで、日本の住宅の寿命は、欧米に比べ、短く扱われてきました。
特に、木造住宅の寿命は、30年未満とされ、住宅ローンの支払いが終わる頃には、建替えが、必要な時期を迎えているのが現状です。
これまでの建物調査・診断の結果から、木造住宅の寿命が短くなっているのは、竣工後、適切な時期に、適切なメンテナンスが、実施されていないことが、最大の原因であると言えます。
また、メンテナンスを実施している建物でも、施工会社が、不適切な工事を行ったり、十分な技術力がなくメンテナンスが必要な部分を見逃している場合もあり、結果として、耐震性能の低下を招いたり、住宅の寿命が短くなっている事例も、多く見られます。
どのような構造の建物であっても、竣工後、適切なメンテナンスを行わなければ、構造部分や、仕上げ材の劣化が進行し、安心・安全・快適に住み続けることができません。
また、木造軸組みという工法が多く用いられている日本の住宅は、構造上、建物内の間仕切り壁の撤去・新設が自由に行えず、家族構成の変化に 伴う空間構成の変更が難しいという問題点も近年クローズアップされています。 安全性、快適性がなく、使い勝手の悪い住宅は、家族の世代交代が行われる頃には、その不動産的な価値もなくなり、リフォームして住み続けら れることなく解体されているのが実態といえます。

建築物の長寿命化

既存住宅をメンテナンスする
住宅メンテナンスイメージ新しい建物でも、風雨や紫外線などにより、部材の劣化が進行します。これを経年劣化と呼んでいます。 建物の劣化が進行すると、外壁などの耐水性能、防水性能が低下、雨漏りの発生、構造部分の腐朽など、快適な空間を維持できなくなるばかりか、建物の寿命を短くする原因となります。
このような、経年劣化を、定期的に適切なメンテナンスすることで、建物全体の本来の性能が回復させることができ、快適な空間を維持し、構造的に安定した建物とすることができます。
建物の構造によらず、一般的には、外壁や、防水のメンテナンスは、10年ごとに行うことが、良いと考えられていますが、定期的な調査を行い、その結果を基に、メンテナンス計画を立て、実施することが、最善の方法であるといえます。
住宅長寿命化への取組み方法
1. インスペクション(建物調査)
建物調査(インスペクション)風景インスペクションとは、建物調査の意味する言葉です。近年、日本においては、中古住宅購入時の建物調査にも用いられます。
これまで、日本の中古住宅は、構造部分などの劣化や、腐朽が進行しているものが多く、建物の価値や、安全性は、低く扱われてきました。しかし、適切な、補修や補強などのメンテナンスを行えば、快適に住むことができる建物も、存在します。また、価格も新築物件に比べ、割安感があるため、中古住宅を購入し、リフォームする方法を選択される方が、多くなってきています。
ところが、どの中古住宅を購入すべきか、どこを優先的にリフォームすべきか、リフォーム費用がいくらかかるのか、といった問題が残ります。
この問題を解決するひとつの手段として、私たちは、第3者性を持った建築士などの専門家による、インスペクションサービスを提供しています。第3者性を持った、建築士などの専門家による、インスペクションを受け、その結果を踏まえたアドバイスを受けることで、個人では難しい、中古住宅の見極めや、必要なリフォームの判断を容易に行うことができるようになります。
また、インスペクションを利用して、現在住んでいる住宅の、メンテナンスを計画する方も多くなってきています。
客観的な判断ができる建築士などの専門家によるインスペクションは、適切なメンテナンスと、建築物の長寿命化に繋がっているといえます。
2. 耐震診断・耐震改修
耐震診断・耐震改修イメージ既存住宅の寿命が短いとされる理由のひとつに、耐震性の低さがあります。 特に昭和56年の建築基準法改正以前の建物は、耐震性能が低いとされています。 しかし、これらの建物も、耐震診断を行い、耐震改修を実施することで、耐震性能が向上し、安心・安全に住めるようになります。
既存住宅の耐震診断・耐震改修は、構造部分を補強することで、これまで解体・撤去されていた建物が、より長い期間使えるようになり、建築物の長寿命化、廃棄物の削減に繋がっています。
最近では、木造住宅ばかりでなく、小さな子供たちが通う鉄筋コンクリート造、鉄骨造の幼稚園や保育所の地震に対する安全性への関心も高まり、耐震診断、耐震改修へ取り組まれる事例が増えています。